
執筆・監修:ベルいやしの呼吸器内科・内科 院長(日本呼吸器学会認定専門医)
いびきや日中の強い眠気に悩まされていませんか?「もしかして睡眠時無呼吸症候群(SAS)かも」と感じていても、CPAP(シーパップ)治療に抵抗がある方も多いのではないでしょうか。
2026年5月、これまで肥満症治療薬として使われてきた「ゼップバウンド」が、新たに「中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」の治療薬としても保険適用となりました。今回は、この新しい治療選択肢について分かりやすくご紹介します。
ゼップバウンドとは
ゼップバウンド(一般名:チルゼパチド)は、週1回の注射で使用する薬です。もともとは2型糖尿病治療薬「マンジャロ」と同じ有効成分で、GIP・GLP-1という2つのホルモン受容体に働きかけることで、食欲を抑え、体重を減らす効果があります。
2025年4月に肥満症治療薬として日本で発売され、その後2026年5月に睡眠時無呼吸症候群への適応が新たに承認されました。SASの治療薬として薬事承認を取得したのは、これが初めてです。
なぜ肥満治療薬が睡眠時無呼吸に効くの?
睡眠時無呼吸症候群は、喉の周りに脂肪がつくことで気道が狭くなり、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。肥満はSASの大きな原因のひとつであり、体重を減らすことで気道の圧迫が軽減され、呼吸の状態が改善することが分かっています。
臨床試験では、体重減少と無呼吸低呼吸指数(AHI、睡眠中の呼吸の乱れを表す指標)の減少に明らかな関連性が確認されており、大規模な試験では4割以上の患者さんでCPAPが不要になる水準まで症状が改善したという結果も報告されています。
どんな人が対象になるの?
保険で使用するためには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断されていること
- BMIが27kg/m²以上であること(原則としてBMI 30kg/m²以上の方が主な対象で、27〜30の方は個別の判断が必要です)
肥満そのものだけでなく、実際にSASの診断がついていることが前提となります。ご自身がBMI基準に該当するかどうかは、身長・体重から簡単に計算できますので、気になる方は受診時にご相談ください。
当院では、呼吸器内科専門医が問診・診察のうえ、SASの疑いがある方には検査のご相談から、実際の適応可否の確認まで丁寧に対応しております。
投与方法
週1回の自己注射で、少量(2.5mg)から開始し、4週間ごとに少しずつ増量しながら、最終的に週1回15mgまで投与します。急激な増量による副作用を避けるため、段階的に進めていくのが特徴です。
治療を受けるにあたっての注意点
この薬は厚生労働省の「最適使用推進ガイドライン」の対象となっており、処方できる医療機関や医師には一定の要件が定められています。また、以下のような点にも注意が必要です。
- 悪心・嘔吐・下痢・便秘などの消化器症状が起こりやすく、特に投与開始から2〜4週間に多くみられます
- 急性膵炎などの重大な副作用に注意しながら、定期的な検査を行います
- ダイエット目的での使用は認められておらず、あくまで診断に基づいた治療として行われます
おわりに
睡眠時無呼吸症候群は、放置すると高血圧や心血管疾患などのリスクを高めることが知られています。CPAP治療がうまく続けられない方や、肥満を伴うSASでお悩みの方にとって、体重管理を通じてSASの改善を目指すこの新しい治療法は、有力な選択肢のひとつになるかもしれません。
ご自身が対象となるかどうか、また治療の進め方について詳しく知りたい方は、当院までお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. BMIはいくつから対象になりますか? A. 睡眠時無呼吸症候群としての適応は、BMI27kg/m²以上の中等症以上の患者さんが対象です。ただし最適使用推進ガイドラインでは、原則BMI30kg/m²以上の方を主な対象としており、27〜30の方については重症度などを踏まえた個別の判断が必要です。
Q. CPAPを既に使っていますが、ゼップバウンドに切り替えられますか? A. CPAP治療との併用や切り替えについては、現在の重症度や治療状況によって判断が異なります。まずは診察でご相談ください。
Q. どのくらいの期間で効果が出ますか? A. 個人差がありますが、少量から段階的に増量していく投与方法のため、体重減少やAHI(無呼吸低呼吸指数)の改善を実感するまでには数ヶ月単位の経過観察が必要です。
Q. 保険適用で受けられますか? A. 中等症以上のOSASと診断され、BMI基準を満たす場合は保険適用となります。ただし処方できる医療機関・医師には一定の要件があり、最適使用推進ガイドラインに沿った診療が必要です。


